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母への75歳のプレゼント

母が75歳になる時、不登校の次男が、週5日の重労働アルバイトをしてかなりの収入を得ていました。
「ばあちゃんに誕生プレゼント買ってあげたいんやけど、何がいいと思う」と訊いてきた次男。
「わたしは毎年、ちょっとしたものしてるけど、今度は一緒に買いに行って、わたしが持って行ってあげようか」ということになり、近所のスーパーに二人で出かけました。
それほど高いものは必要ない、本当にちょっとしたもので十分喜ばれるからね、と言い、何がいいのか分からない様子の次男に、「ばあちゃんは、首から上がすごい汗っかきだから、タオルハンカチでもあげたら喜ぶと思うよ。
いつも持ち歩いてて、顔は拭くは口は拭くは手は拭くは、一枚で全部使ってるから、それ見てるほうが嫌なぐらい。
最低2枚持ち歩いて使い分けてって言ってるのに、頑固で言うこと聞かないからね。
綺麗好きの汚いこと知らず、って自分で言ってるよ。
昔からよくタオルハンカチで喜んでたから、それなら安いし、実用品で喜ばれるでしょ」と言ってやると、店員さんに案内された売り場に並ぶタオルハンカチを手に取り、プリキュアがいいかな、とか、ふざけて笑いながら吟味する次男。
「あ、トトロ」比較的地味な色の、トトロハンカチがあり、「これやったらばあちゃんも知ってるよな」「うん、知ってる。あんたたちにしつこくビデオ見せられたからね」「魔女の宅急便のジジもあるけど、これは知らんよね」そう言いつつ、トトロハンカチを選んで、包装してもらった次男。
わたしも別のプレゼントを選びました。
まるで小学生のクリスマス会や誕生会で受け渡しするような値段。
ちょっと理由があり、わたしも次男も父親には会いたくないので、わたしがこっそり渡しに行くつもりだったのですが、電話で誕生プレゼントを持っていくよ、とそう伝えると、喜んだ母、父親に話してしまったらしく、少し僻んだように自分の誕生日をわたしに連発しています。
次男からのトトロハンカチを見た母は、満面の笑みになり、「あ、トトロや、可愛いなあ」と大喜びしました。
「次男ちゃんにありがとう言うといてな。メールでも送るけど」かなり経ってから、次男のプレゼントは、勿体なくて使えない、と母が言いました。
気持ちは嬉しいけど、母も高齢。
先々もしもの時に、未使用のトトロタオルが遺品から出てきたら、次男が複雑な思いをするだろうし、やっぱり使ってやってほしいな、と思いました。
その5か月前に両親は団地に当選して引っ越したばかりだったのですが、デリバリー寿司店に勤めて配達バイトをしていた長男が、「引っ越し祝いに寿司持っていったるわ」と言っていたので、それを伝えると次男の時以上に喜び、「晩御飯抜いとくわ」と言った母。
寿司の礼を何度も何度も言って大喜びでした。
母は昔から、兄弟にしろ孫にしろ、「長男」が大好きで大事ないわゆる昔の人間なので、後で考えて、次男のハンカチより、長男の寿司のほうを、より喜んだんだな、公平に受け止めてくれないかな、と複雑な心境ですが、小学生の時から少しずつ不登校が始まり、中学もほとんど行けずに義務教育は破滅的、やっと入った通信制高校も全くと言っていいほど行けなかった次男が、大人が一日で値を上げる過酷な職場で何ヶ月も頑張り続けて買った母へのプレゼントは、母にとっては長男のそれより価値が下がるものであっても、わたしにとっては、次男の優しさを見た、大切な祝いのしるしであると、今でも思っています。
タオルハンカチが忘れられたまま死蔵されることがないことを祈っています。

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