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病院にいる母へのプレゼント

母は、余命を告げられてからは3年、ほとんどが入院生活でした。
もう長く生きれないと知った時、周囲の方は母に宗教を進めたりもしましたが、「そんな暇があれば、病院に行って先生に診てもらいなさい。」と勧誘者に説教する人でした。
最後まで前向きで、さすが母ちゃんと思わせてくれる人でした。
病院に行く時は、何をサプライズにプレゼントして喜ばしてあげようかと考えます。
でも、余命を聞いている母には、何をあげても気が晴れることも、嬉しいと感じることもなかったでしょう。
それでも、懲りずに食べれないとしりつつも、近所の総菜や寿司を買っていっては、「一口でもどうかしら」と勧めずにはいられませんでした。
母は、うっとおしいと思っていたかな。
そっとしておいてほしかったかな。
3年目には、70キロあった体重も40キロになり、先生からも「もう近く限界でしょう」と言われ、途方にくれました。
母が一番幸せだったのは、私の結婚式の時だったようです。
これは、私の兄弟達も「あの時の嬉しそうな顔は忘れられない」と言ってくれています。
本当は、孫でもできていたら、もっと幸せを感じてもらえたのですが、残念ながら孫を抱くことはできませんでした。
でも、晩年に病室に付き添っていますと「あの子はどうしてるかな」と、私の知らない方の名前を懐かしそうに呼ぶのです。
どうも、母が子供時代によく遊んでいた友達のようです。
母の意識は、この窮屈で狭く、出口のない病室から遠く故郷に飛んでいるのだと感じました。
表情をみていても、とても和んで「楽しかったな~」とつぶやいています。
幼い時からの記憶が、いっきにあふれてきている感じでした。
そして、そんな母を見ながら私は、お別れの時が近いということを予感していたのです。
奇跡は起きないかな。
このまま長々と何十年も、病院と家と出たり入ったりでも、入院したままでもいいから、このまま生きていてくれないかな。
なんとかならないかな。
と切に思っていましたが、願いはむなしくなるばかりで、とうとう、母は現実と、夢の境がわからなくなってきました。
ある日の夕方、「看護婦さん、早くしてくれたら、この子(私)は子供連れて帰れるでしょう」と言いだしたのです。
私に子供はいませんので、看護婦さんも一瞬無言になり、でも即座に「そうだねー」と処置してくれました。
亡くなる直前には、自分には孫が確かにいると思いこんでいたんです。
また、それを否定せず受け入れてくださった看護婦さんには、今も感謝しております。

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