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形には残らないけれど記憶に残るプレゼント

プレゼントというと、一般的に形の残る『物』として贈ることが多いのですが、私は母に形の残らないプレゼントを贈ったことがあります。
その時のことを思い出すと、今でもちょっと母に悪いことしたなあと思ってしまいます。
私は、高校を卒業してすぐに働き始めました。
就職後の一年間は母と一緒にアパートで暮らしていたのですが、私は一人暮らしをすることにしたのです。
ちょうどその頃、母は知人の紹介で市外へ転職することになっていたので、自動車の運転免許を持っていなかった私は会社へ徒歩で行ける場所に引っ越しすることにしました。
お互いの引っ越しは4月に予定していました。
そして、3月には母の誕生日があったので私はプレゼントとして母を連れてカニを食べに行くことにしたのです。
私の両親は私が小学生の時に離婚していて、母は女手一つで私を育ててくれました。
正直なところ、私は母が私を高校へ行かせてくれるとは思っていなかったので、高校へ進学させてくれたことに対してとても感謝していました。
なので、就職してからは母に自分でできる範囲での生活費を渡し、自分の引っ越し費用も貯金していました。
ある程度の貯金はできたなあと自分でも思っていたので、私たち親子にとって高級であり、母が大好きなカニを食べに行くことにしたのです。
当日、仕事を終えた私は母と一緒にタクシーに乗ってお店へ向かいました。
普段、遠出する時はバスを利用するので、タクシーに乗ることも私たちにとっては贅沢なことでした。
もちろん、タクシー代は私が出しました。
お店へ到着し、私たちは思う存分カニを美味しくいただきました。
そして会計の時に、表示された金額は私の所持金だけでは少し足りなかったのです。
当時、まだクレジットカードも持っていなかったし私はどうしようかと思ったのですが、母が気づいてくれて足りない分を出してくれました。
帰りのタクシーの中で、『足りなかった分は明日お金をおろしてくるから』と話したのですが、母は『気にしなくていいよ』と言ってくれました。
そして実際に足りなかったお金を渡しても受け取らなかったのです。
『あんな美味しいカニを格安料金で食べられて良かった』と笑って言いました。
私はなんだか申し訳ないなあと少し落ち込んでしまいました。
その後にその時のことについて話すことがあったのですが、『あの時は外食に連れて行ってくれただけでも嬉しかったから、いいのよ』と母は言っていました。
母の懐の深さを感じ、20年近く経った今でも記憶に残るプレゼントです。

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