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私から祖母へのプレゼント

2011年3月東日本大震災がおこった。
大きな地震と津波で多くの家がなくなった。
普段は関東で学生をしている私もすぐに地元に駆けつけた。
私の祖母は家をなくしていた。
海際から5mほどの場所で海がすぐ目の前にあった祖母の家は跡形もなくなっていた。
幸い祖母は無事だった。
ひとまず私の実家へと連れ帰って避難生活となった。
その後、仮設住宅が決まり「都会はいやだ」と話していた祖母は一人暮らしを始めた。
75歳をすぎてからの初めての一人暮らしだった。
2DKで1つの部屋は4畳半。
祖母にとっては狭くもなく広くもなくちょうどいいらしかった。
私も数ヶ月に1度足を運んで様子を見ていた。
震災がおこってから1年後。
元々住んでいた地域は全くと言っていいほど復興が進んでいなかった。
進むというよりも計画そのものが地域住民の意見の衝突によって進まない様子だった。
祖母は「じいさんの墓があるからあそこに戻りて」と言っていた。
2年目の春頃、叔父(祖母の息子)との話し合いの結果、元々住んでいた土地を離れて別の場所に家を建てることになった。
というのも、復興計画はできてきたものの高台移転などに伴う工事で土地が買収されることになり結果として、元の土地には住めないということだったからだ。
ある程度、その土地から離れた生活に慣れ始めたこともあってか祖母も叔父に同意した。
家の工事は思うように進んでいなかった。
元々の資材不足に加えて東京オリンピックがあるとかで資材が手に入りづらくなっていた。
建築開始から4ヶ月後、私も建築途中の家を見に行っても外壁だけができている状態だった。
今年の3月私は友達と旅行で京都に行ってきた。
お土産屋さんに入って、西陣織であろう布が5000円位で売られていた。
それは山と雲と海が描かれた織物だった。
私は祖母の元々住んでいた町を思い出していた。
リアス式海岸で、山があってすぐ海がある。
周囲に高い建物なんかないから見えるのは、山の緑と空の青と海の青ばかりだった。
「そうだ。これをばあちゃんに新築祝いにプレゼントしよう」と思って購入した。
その頃には家も完成して、祖母の引っ越しも完了し、叔母とともに住んでいた。
私はその布を持って、完成した祖母の家へ行った。
中に入って、お茶を出してもらった。
私はその布を祖母に渡した。
「よかったね。綺麗なお家がたってほんとによかったね」といいながら。
すると祖母は「皆さんのおかげさまで」と一言言って笑っていた。
西陣織は好みじゃなかったのか、あまり話題になることもなかったが、受け取ってくれたのでよしとしようと思った。
3LDKの木造戸建て。
とっても暖かかった。
こういった経緯を経て、私は4月から不動産屋として皆さんに家を売る仕事をすることにした。

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