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母へのプレゼントの思い出

数年前に亡くなった母の葬儀の時、遺影の側に少し古ぼけたクッションが一緒に並んでいた。
それは私が小学生の時、お小遣いを少しづつためて買った母の日のプレゼントだった。
当時のお小遣いは些細な額で、そのため大した物が買えないと思いつつも、近所のデパートなどを歩きまわった。
いろいろな店舗を何件も歩きまわった末、とある衣料品店に辿り着いた。
そこには様々な衣料品の他に、手頃な日用品なども揃っていた。
その中に1つのクッションを見つけた。
私の家は自営の飲食店で、母も父も仕事中は立ちっぱなし。
毎日何時間も座れない作業をしている姿を、子供心に気の毒に思い休みの日には腰を揉んだり肩を叩いたりしてあげていた。
そんな母がこのクッションを使えば腰掛けとして丁度いいのではないかとそのクッションを手に取りながら想像し購入を決意した。
手持ちのお金を確認し、なんとかギリギリに買える額だと確認しレジに向かう。
女性店員が対応に出てきてくれたが、そこで思わぬ一言を言われた。
「このクッションは、中綿は販売品ではないんですがよろしいですか」ショックだった。
私はプレゼントを見つけた嬉しさに我を忘れて値札に付いている「クッションカバー」という商品名を見落としていたのだ。
店側はあくまで展示用に中身を詰めたクッションを出していただけでクッションそのものは販売していなかったのだ。
想像だにしなかった事に女性店員の「どうしますか」の言葉に何も反応できず、そのうち気恥ずかしさと悲しさと情けなさで涙が溢れそうになった。
その様子を見ていた女性店員が事情を察してくれたのか「どなたかへのプレゼントですか」と聞いてくれた。
私は必死に、母の日のプレゼントとしてこのクッションを贈りたい事立ち仕事をしている母を少しでも楽させたいと思っている事カバーを買ったら、もう中綿を買うお金すら無い事を女性店員に伝えた。
私自身は、もうどうしようもない事だと諦めていたのですがその時点では、もう誰かに自分の気持ちを聞いて欲しかっただけだったと思います。
話し終えたあと、女性店員は「ちょっとお待ちください」と一言言い残すと奥に入ってしまい、5分ほど待たされた。
手持ちぶたさで待っていると、女性店員が戻ってきて「カバーはお客様から、中身は当店から、お母様にプレゼントです」と。
一瞬、何を言われたのか理解できなかったのですが女性店員が丁寧にラッピングまでしてくれて品物を渡してくれた時やっと全てを理解し、にこやかに微笑んでくれた女性店員に心から「ありがとうございました」と泣きながら言ったのを覚えています。
その後、母に手渡したそのクッションは、母が亡くなる日まで一緒に側に付き添ってくれて、母と一緒の棺に収められました。
思い出のクッションは、思い出のみの存在になりましたがクッションを渡した時の母の笑顔と、女性店員の微笑みは私の中で一生消える事はないでしょう。

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